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小説「W(ワシントン家)の悲劇」

 ダニエルとシャニーが大恋愛の末、結婚したのは2010年1月のことだった。わずか4年足らず、しかもこんな形で破局に向かうとは、誰が予想しただろうか――。

 ダニエルは名門「ワシントン家」の後継ぎ。近年は衰退しているが、それでも有数の名門一族だった。

 ダニエルは結婚前、一族の再興を懸け、「アルバート・ハインズワース社」に巨額の投資をする。だが、この会社は外見だけで中身は何もない事実上のペーパーカンパニー。結局、41ミリオンものお金をだまし取られてしまう。

 結婚したダニエルは妻シャニーの勧めで、今度は「ドノバン・マクナブ社」に出資する。ハインズワース社と違い、マクナブ社は過去の実績が十分。安全な投資と思われたが、ダニエルから経営の現場を任されたシャニーとの折り合いがうまくいかず、この投資も結局、失敗に終わる。

 相次ぐ巨額の投資失敗は2人の結婚生活を苦しめた。だが、それでも、ワシントン家再興を誓うダニエルとシャニーの絆が揺らぐことはなかった。

 そんな2人に転機が訪れたのは、2012年春のことだった。待望の男の子が生まれたのだ。2人はその子を「ロバート」と名付けた。

 ロバートはすくすくと成長する。その成長ぶりは親の期待をはるかに上回るものだった。なんと、エリートが揃う東学区で最優秀の成績を収めたのだ。

 「待ちに待ったワシントン家の復活だ」――。

 ロバートのあまりの優秀さに誰もがそう確信した。ダニエルとシャニーは幸せの絶頂にあった。

 だが、2人の間には微妙な食い違いが生じ始める。それは、ロバートの育て方をめぐる相違だった。

 ダニエルは大切な後継ぎであるロバートを溺愛し、学校にはリムジンで送り迎えするなど、過保護に育てた。これに対し、シャニーは「傷は子供の勲章」とばかりにロバートをたくましく育てようとした。

 2012年秋、事件が発生する。ボルチモアの大手建設会社「ワタリガラス組」のハロティ永田容疑者が運転していた巨大ダンプカーに、ロバートがはねられてしまう。

 この時は軽症で済んだが、翌2013年1月、ロバートは再び事故に遭う。シアトルの暴走族グループ「海鷹族」の連中に襲われ、重傷を負ってしまったのだ。

 命に別状はなかったのが不幸中の幸いだった。だが、この事件は、ダニエルとシャニーの間に決定的な溝をつくってしまう。

 「ロバートはワシントン家の大切な後継ぎだ。大事に育てないといけないんだ!」と怒鳴るダニエル。

 「ワシントン家の後継ぎだからこそ、たくましく育てないといけないのよ!」と反論するシャニー。

 ロバートの教育方法をめぐる2人の口論は延々と続き、夫婦の溝は深まるばかりだった。

 ダニエルに甘やかされすぎたからか、それまで謙虚だったロバートが急にわがままになる。優秀だった学校の成績も急落し、東学区で最下位にまで落ち込んでしまった。

 ロバートとともにワシントン家は再び凋落していく。既に修復不能な関係にあったダニエルとシャニーは決断する。

 「離婚するしかない」――。

 しかし、離婚のネックになっているのが、結婚時に交わした約束だった。5年以内に離婚した場合は、ダニエルがシャニーに年7ミリオンの慰謝料を払うことになっていたのだ。4年で離婚すれば、残り1年分、つまり、7ミリオンの慰謝料支払い義務が生じることになる。

 「慰謝料の支払いなしで済ませられないものだろうか…」

 大金持ちのくせに変なところでケチになるダニエルは、シャニーが「ウチの旦那は息子をリムジンで送迎している」と周囲にバラしたことを約束違反と見なして、慰謝料免除を主張し始めている。

 これに対し、慰謝料が支払われない限り絶対に離婚しないと言い張るシャニー。

 泥沼化する2人の離婚騒動。こうして名門ワシントン家は一段と没落していくのであった。。。

(おしまい)



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